鋳造機を選ぶ3原則

鋳造機やその周辺機器の導入を考える際、何かと外観デザインや価格に目がうばわれがちになるのは、しかたのない事です。でも、鋳造機は自動車や洋服などと違い、『効率の良い生産』という重大な使命があります。
この事をまず念頭に置き、あなたのご予算や目的に合った実益のある選択が必要です。

現実的にいうと『効率の良い生産』は、生産ラインの規模や、ターゲットとしているマーケットで要求される品質、価格のニーズの違いがあり、唯一論的には論じられません。機械の仕様や損益分岐を念頭に置きながらコストパフォーマンスを考え、適切な設備投資金額が決定されるのは当然です。
つまり、生産目的や目標を明確にして、それに見合う適切な機種選びが必要となります。

 

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機種選定でもっとも大切な基本

鋳造機を選ぶ上で、とにかく大切なのが『予算』『金属の種類』『生産量』です。当たり前のようですが、項目別に詳しく紹介していきます。

鋳造機の機種選択に必要な3原則

近い将来の生産目標を立てたうえで・・・

■ 予   算

■ 金属の種類

■ 生 産 量

 

鋳造する金属の種類を決める

鋳造機は、それぞれ鋳造可能な金属、推奨される金属が決まっています。
金属にはそれぞれ融点があり、錫のような融点230℃以下の金属や、金・銀・銅合金のような融点1000℃前後の金属、融点1700℃以上のプラチナなど、溶解温度の違いで鋳造機の種類が変わります。たとえば、ホワイトゴールドと言っても、パラジウムの含有量によっては、高融点ホワイトゴールドとなり高融点金属用の鋳造機が必要です。

ホワイトメタルやピューターなど、低融点合金を鋳造する場合には、誘導加熱装置はオーバースペックとなる可能性があり、形状によっては、ラバーキャスト用の溶解炉と遠心鋳造機が最適な鋳造装置となります。

また、チタンのような特有な金属は鋳造方案や機構などが他の金属と違うため、その金属専用の鋳造機も存在します。

そのため、鋳造する金属をある程度定めて鋳造機を決めます。将来的に挑戦したい金属も視野に入れながら考えると、なお良いと思います。

 

生産量を決める

概算の生産量を決める必要があります。この生産量の見積もりや目標が、鋳造機の規模を確定する最も直接的な基準となります。

週産でいくつぐらいの鋳造品を鋳造するのか? これにより鋳型にいくつのワックス型を付けるのか、鋳型のサイズはどの程度が良いのか、が算出できます。当然鋳型のサイズが大きければ、大きなワックスツリーをつくることができます。
生産量が少なくても、鋳造物単体の大きさが大きい場合には、当然大きな鋳型が必要になることも忘れてはいけません。一般的には、最大鋳型のサイズが大きくなると、それに見合った熱源やチャンバー等が必要となる為、機械単価が高くなります。

購入を検討している鋳造機の単位時間のタスク(1時間にいくつの鋳型を鋳造することができるか)をメーカーに問い合わせることをお勧めします。

 

将来的な生産量の増加を考慮する

もうひとつ、鋳造による生産ライン規模を決める場合に必要なことは、『生産の成長・拡大を見越す』ことです。
趣味で行う場合以外は、販売(生産量)が右上がりになることを見越して見積もることが重要です。予算には限りがあると思いますが、現状のままの受注状態での生産性を見積もると、多めの受注に設備が対応できなくなる可能性があり、結局、商機を失う可能性があります。
過剰な設備もお勧めしませんが、ギリギリのラインで設備を組むと将来的な発展性が期待できない場合もあるので、現状必要な生産量から2~3割増しくらいの余力を確保することが望ましいでしょう。

 

鋳造製造ラインの周辺設備

生産性を考えて選定することは、鋳造機の規模だけではありません。
当然、検討している鋳型数に見合った焼成炉の大きさや台数が必要です。さらには、その鋳型数を作り出すためのワックス型の生産性も考えなければ片手落ちになってしまいます。
自社内で研磨も行う場合には、鋳造品を決まった納期内に仕上げるための設備も必要です。

とにかく、鋳造前工程においても過剰稼動や生産の停滞が無いような適切な規模の周辺設備が必要です。

 

デジタル鋳造機かアナログ鋳造機か?!

近年の主流は、やはりデジタル機です。デジタル機の最大のメリットは、機械操作により品質などの製品生産の再現性が向上することです。鋳造データを入力し、その条件でオペレーションが可能なデジタルオート機は、その最たる機種です。
いくつかのタイプがありますが、その選択基準を何処に求めるかが大切になります。ここでは、『価格』と『技術』の2つの視点からみていきます。

価    格    面
機械の自動化が進めば、機械の価格は当然高くなります。デジタル機の購入を視野に入れる場合、何処までの自動化が必要なのかを考える必要があります。
例えば、アナログ式とデジタル式を融合したアナログ式のセミオート機など、デジタル式を一部取り入れた機械があります。測温装置をオプションで付けたりと、ご予算に合わせて選択することもできます。
技    術    面
技術面でいうと、オペレーターが経験を活かして鋳造したいのか、それとも条件をある程度設定した上で、誰でも鋳造ができるようにしたいのか、など社内体制によって機種を選んでいきます。

 

デジタル鋳造機の注意点

完全自動というと一見簡単そうに見えますが、実際は鋳造条件データがなければ、機械は思う通りの結果を出してくれません。つまり、そのデータは誰かが決定し、鋳造機に設定する必要があるのです。
毎回同じような形状を鋳造する場合にはデジタルオート機をお勧めしますが、毎回形状が変わる場合、ある程度パターン化した鋳造条件データを設定しておくにしろ、必ず限界があります。
また、そのデータパターンが増えると、データの選択などを結局人間が判断しなければなりません。

鋳造経験のある方が、データの条件設定を含めた生産や品質を管理し、その他に鋳造のみを担当する人員を配置することが可能な場合には最適の機種となりますが、そうでない場合には、過剰設備になる可能性があります。

また、デジタル式の場合、デジタル信号をつかさどるユニットに故障が発生した場合、応急の対応策が不可能な場合があったり、修理に関わるパーツが高めになることがあります。

 

アナログ鋳造機の注意点

アナログ機は構成パーツが少ない分、故障確率が減りますが、生産の再現性(常に同じ品質や高率で生産すること)を経験値にたよることになります。

アナログ式のセミオート機は、マニュアル機と比べるとパーツ数が多いので、故障頻度の確率は増えます。
例えば、ある1つの部品は、1万回に1度故障する可能性があるとします。1万回の鋳造の中でこのパーツが故障する確率は1/10000ですから、このパーツが5個使用されている場合は、単純に5/10000回(2000回に1回)の故障確率があります。
つまり、構成パーツが多いほど故障の確率は高くなります。

 

メーカーからの技術サポートも重要

機械の機能面や価格面だけでなく、購入後のメーカー側からのサポート面もかなり重要な機種選択条件の一つです。

特に宝飾や装身具の鋳造の場合、機械パーツの鋳造と違って毎回鋳造する品物のデザインが変わります。ということは、鋳造条件も変わってきます。鋳造経験10年以上の方々でも、場合によっては、思った通りの鋳造物が得られないこともあります。
そんなとき、メーカーからの技術サポートがあれば、不必要な試行錯誤を行わなくとも、メーカーからの情報を利用し、品質向上への最短距離を選べる最大のアドバンテージが期待できます。

吉田キャスト工業は、各鋳造方案による機種や価格帯、手動機・自動機などあらゆる種類の鋳造機を取り揃えており、ご要望により装置のカスタマイズも行います。
また、鋳造専門の技術者が、機械の修理だけでなく鋳造条件などのご相談にも対応致します。
ぜひ一度ご相談までにお問い合わせください。

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