【宝飾・アクセサリー】/スターリングシルバーのロウ付けと熱処理

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スターリングシルバーロウ付けなどで加熱する際、知っておいた方がよい話をします。

ロウ材の定義は、AWS(アメリカ溶接協会)で450℃以上となっており、工業規格外の工芸用の銀ロウの融点は、715~920℃となっています。

ロウ付けの際にはロウ材の融点まで加熱しなければなりませんが、ここでスターリングシルバーやコインシルバーなどのロウ付けでは、バーナー加熱にせよ、抵抗熱のロウ付け装置にせよ、地金液相線近くまで温度を上げなければなりません。

 

銀蝋の規格区分と工芸用銀蝋の成分

「砥石」と「切削・研磨」の総合情報サイト様/掲載から抜粋させていただき、銀蝋の基本情報を掲載します。

3つに分かれる銀ロウの規格と区分(表1)

銀蝋の種類銀の割合(%) 亜鉛は40%未満液相線温度(℃)特   徴
低   銀   蝋10~33770~850工業用として使われ、黄銅蝋より流れがよい。その名のとおり、3種類の中では銀の割合が最も低い
JIS規格の銀蝋24~73620~800工業用に17種が規格化され、ISOとも整合性。低温でもロウ付け可能な品種が規定されている。
日本伝統の銀蝋58~95715~920古くから日本の伝統工芸用途で使用。流れがよく色も銀比率の高いものほど白色。JIS規格にはない銀の純度の高い蝋がある。

 

日本の伝統的な銀蝋の種類と成分一覧(表2)

銀蝋の種類配合(重量比)成分組成(%)固相線温度(℃)液相線温度(℃)
せば板(真鍮)AgCuZn
五厘蝋10.0595.22.91.9870920
一分蝋10.190.95.53.6800815
二分蝋10.283.310.06.7740805
三分蝋10.376.913.99.2745775
五分蝋10.566.720.013.3690730
七分蝋10.758.827.816.4680715

※ (表1)(表2)    銀ロウの種類と成分、融点について (toishi.info) より

 

スターリングシルバーの硬さが変わる

銀と銅の二元合金のスターリングシルバーの融点は910℃とされています。別の言い方をすれば、915℃で凝固を開始し、凝固が完了する温度は825℃となっています(液相温度と固相温度に開きがあるため)。

ロウ付けの観点で言うと、五厘蝋は使えません。少なくとも一分蝋から下の融点の銀蝋を使います。一分蝋の場合、融点は815℃なので、融点だけを見ればスターリングシルバーの融点より低い温度でロウ付けが可能なのですが、ここで、注意しなければならない点があります。もし、加熱する前のスターリングシルバーが熱処理により硬度を変えてある場合、二次加工や三時次加工で熱を与えると、その冷却過程により金属の硬度や色が変わる可能性があるということです。

指輪のサイズ直しをする前のスターリングシルバーが、『いつものスターリングシルバーより色が白い』や『なんとなく硬い気がする』場合には、ロウ付け後の冷却方法で色が変わったり、硬度が変わったりしてしまいます。

ロウ付けをした後、ワークを希硫酸につけて急冷し酸化膜を取るのが一般的です。しかし、冷却方法を間違えると硬度が変わります。

 

いつものスターリングシルバーより色が白い

ロウ付けなどの熱加工をする前に、手物の製品を良く観察して下さい。

恐らく通常のスターリングシルバーより柔らかいはずです。鋳造が完了したスターリングシルバーが700℃あたりで急冷されています。もし、ロウ付け後の製品の色が以前より黒っぽい場合には、ロウ付けの後も同じように700℃で急冷するともとの色になります。

 

いつものスターリングシルバーより硬い

手元のスターリングシルバーが硬い気がする場合、製品製造工程で、熱による表面処理がされている可能性があります。

スターリングシルバーは、200~300℃で保持すると、β結晶(β組織)と呼ばれる2番目に晶出する金属結晶の作用で硬くなります。電気炉などで、同じプロセスを行うと元の硬さに戻るはずです。

 

ロウ付け前のスターリングシルバーより柔らくなった

『ロウ付けした後、製品が明らかに柔らかくなってしまった!』場合には、ロウ付け前のスターリングシルバーに熱処理がされていて硬度が上がっていた可能性があります。

電気炉などで、スターリングシルバーの固溶限温度(775℃)で溶態化処理を行い、210℃で30分間加熱してから放冷すると非常に硬くなります。

 

コインシルバーを加熱する場合

もともと硬い合金ですが、急冷すると柔らかくなります。硬度を上げたい場合には、ロウ付け後も徐冷することをお勧めします。

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