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吉田キャスト工業株式会社

鋳造用語集

白 金(はっきん)/プラチナ
Platinum

白金は古代から南米などで天然の金属として知られていたが、ヨーロッパで独立した金属として本格的に研究されるようになったのは18世紀である。南米コロンビアなどの砂金鉱床では、とともに銀白色の融けにくい金属粒が産出しており、スペイン人はこれをに似た金属として認識していた。

元素名Platinumは、スペイン語で銀を意味する「plata」に由来する「platina」に起源を持ち、「小さな銀」「銀のようなもの」という意味で呼ばれたことに由来する。当初は金の採取を邪魔する扱いにくい金属として見られることもあったが、その後、高い耐食性や耐熱性を持つ貴金属として価値が認められていった。(白金族/【こぼれ話】昔、白金は「邪魔な金属」だった 参照)

白金は、第6周期・第10族に属する遷移金属元素であり、白金族元素(PGM)を構成する。
電子配置は [Xe] 4f¹⁴5d⁹6s¹で、化合物では+2、+4などの酸化状態が重要である。銀白色の美しい金属光沢を持ち、展延性に優れ、化学的に非常に安定している。密度は約21.45と非常に大きく、よりもさらに重い金属である。
融点は約1,768℃と高く、高温でも優れた耐食性を持つ。一般的な酸には侵されにくいが、王水など特定の強い化学環境では溶解する。
天然には自然白金として産出するほか、他の白金族元素とともに鉱石中に存在する。また、ニッケル・銅鉱石などの副産物として回収される場合も多い。世界の供給地域は偏っており、特に南アフリカは重要な白金生産地域である。

白金の代表的な用途は、自動車排ガス浄化触媒、化学・石油精製触媒、ジュエリー、燃料電池、医療機器、電子部品、ガラス製造設備、温度計測などである。

特に触媒としての能力が高く、自動車排ガス浄化ではパラジウムロジウムとともに重要な役割を持つ。また燃料電池では、水素と 酸素の電気化学反応を促進する触媒として白金が利用されている。

宝飾分野では、白い色調、耐食性、重量感、希少性などから指輪、ネックレス、宝石の石座などに広く利用される。ただし純白金は比較的軟らかいため、実際のジュエリーでは他の元素を加え、硬さ、強度、鋳造性、加工性などを調整したプラチナ合金として使用されることが多い。

元   素   記   号   Pt
陽      子      数   78
価   電   子   数 10   ※5d・6s電子を含めて考えた場合
原      子      量   195.084
融                点   約1768
沸                点   約3,825
密                度   21.45
存      在      度 地球  約0.005 ppm  宇宙 宇宙では極めて少ない (太陽系の火星と木星の軌道の間にある領域は一般に「小惑星帯」メインベルト)には、プラチナを多く持つ小惑星が確認されている)
代表的な製品 ジュエリー、自動車排ガス浄化触媒、燃料電池、化学触媒、医療機器、熱電対、ガラス製造設備、電子部品

白金(プラチナ)と鋳造

白金の鋳造で最も大きな特徴は、非常に高い溶解温度である。
純白金の融点は約1,768℃であり、金の約1,064℃、の約962℃と比較してはるかに高い。
さらに実際の鋳造では、完全に溶融させて鋳型へ充填するため融点以上まで加熱する必要がある。そのため白金鋳造では、高温に対応した鋳造機、坩堝、鋳型材、温度管理鋳造温度鋳型温度が必要となる。
また白金は高温状態で埋没材坩堝などから不純物を取り込む可能性がある。特にケイ素(Si)の混入は白金合金の融点や凝固挙動、脆化などに影響する可能性があるため、金や銀の鋳造以上に材料の選択と溶解環境の管理が重要となる。(※一般的な宝飾品では、シリカのコンタミにおける実害がないが、工業製品や新合金開発などの分野などでppm単位の汚染が問題になる場合には特に注意が必要となる。)
白金鋳造では、純白金をそのまま使用するより、用途に応じて他元素を添加した白金合金が多く利用される。

白金に混ぜられる主な元素

① ルテニウム(Ru)

ルテニウム / Ruthenium
代 表 例 宝飾品用 Pt950-Ru5% / Pt950-Ru2%-Pd3% / Pt950-Ru2%-Pd2%
特   徴 非常に代表的な白金合金である。純白金より硬さと強度が向上し、白色も良好で耐食性にも優れる。
加工・切削・鍛造・宝飾品などに適し、鋳造にも使用できる。一方、融点が高いため鋳造には十分な溶解能力が必要となる。製品の肉厚などが一定以上であれば、Ru2%でも十分硬くなる。Ru3%の場合、収縮鋳巣などの発生が顕著になり、鋳造の観点から見ると難易度が高い。
主 目 的 硬さ・強度・耐摩耗性・加工性の向上

 

② イリジウム(Ir)

イリジウム / Illidium
代 表 例 宝飾品用 Pt900-Ir10% / Pt950-Ir5%
特   徴 古くから使用されてきた代表的な白金合金である。
イリジウムを加えることで白金の硬さや機械的性質を改善できる。
Pt900-Ir10%は加工・鋳造ともに利用されてきた実績のある組成である。一方、Pt950-Ir5%は比較的軟らかく、鋳造品では用途によって硬さ不足となる場合があるため、加工材としての方が適する場合がある。
主 目 的 硬さ・強度・加工性の向上

 

③ コバルト(Co)

コバルト / Cobalt
代 表 例 宝飾品用 Pt950-Co5% / Pt950-Co3%-Pd2%
特   徴 白金鋳造において非常に重要な合金である。
コバルト添加によって白金溶湯の鋳造性が改善され、細かな形状へ充填しやすくなる。また結晶粒が微細になり、鋳放し状態でも比較的高い硬さを得ることができる。
このため精密なジュエリー鋳造に適している。
一方、Coを含むことで高温で酸化しやすくなり、Pt-Co合金はわずかに強磁性を示す。このため溶解では雰囲気管理が重要となる。また、コバルトの名称が放射性物質を連想させることや、含有量が多いと「色」に黒味が発生することで、一般的なプラチナ合金から連想される色とは異なるので、使用を敬遠する場合がある。
尚、コバルト入りのプラチナ合金の鋳造では「大気鋳造」が最も良いとされる。これは、真空雰囲気でコバルトを溶解するとコバルトの持つ脱酸性が損なわれ、ガス鋳巣の発生率が上がるためである。
主 目 的 流動性・鋳造性・硬さ・結晶粒微細化

 

④ パラジウム(Pd)

パラジウム / Paradium
代 表 例 宝飾品用 Pt950-Pd5%など
特   徴 同じ白金族元素であるため耐食性に優れ、貴金属のみで構成できる。
比較的延性が高く、加工性の調整などに利用される。日本を含め宝飾用白金合金として使用されてきた。
ただし、RuやCoを添加した白金合金と比較すると軟らかくなる組成もあり、目的に応じた材料設計が必要である。
主 目 的 延性・加工性・白金族合金としての耐食性

 

⑤ 銅(Cu)

銅 / Copper
代 表 例 宝飾品及び工業製品用 Pt950-Cu5% / Pt950-Cu3%-Co2%
特   徴 白金の硬さや機械的性質、加工性を調整するために使用される。
銅は卑貴金属のため、合金のコストを下げる意図で銅が配合される場合もある。Pt-Cu二元合金の場合、他の組成より鋳造性が悪くなり、酸化物などによる鋳造欠陥が出やすい。これを改善するためにCoなどと組み合わせた多元合金として使用されることもある。鋳造後の二次加工を前提とした場合に用いられる。
主 目 的 硬さ・強度・加工性

 

⑥ 金(Au)

金 / Gold
代 表 例 宝飾品用 多元合金の構成要素
特   徴 金を加えることで融点や加工性、機械的性質などを調整できる。Pt-Au-Inなど、他元素と組み合わせた鋳造用合金の研究・実用例もある。
主 目 的 融点・加工性・機械的特性の調整

 

⑦ ガリウム(Ga)

ガリウム / C
代 表 例 工業製品用 
特   徴 熱処理硬化型の白金合金などに利用される。
Gaを添加すると白金合金の融点を下げることができ、さらにInやCuなどと組み合わせることで析出硬化を利用した高強度白金合金を作ることができる。
主 目 的 低融点化・熱処理硬化・高強度化

 

⑧ インジウム(In)

インジウム / Indium
代 表 例 工業製品用 
特   徴 Gaと同様、熱処理型・特殊白金合金に利用される。
Pt-Ga-In系などでは、一般的なPt-Ru合金より低い温度で溶解できる合金もあり、鋳造性と熱処理後の高硬度を両立させる目的で使用される。
主 目 的 低融点化・熱処理硬化・鋳造性の調整・高強度化

 

⑨ タングステン(W)

タングステン / Tangsten
代 表 例 装身具の留め具やチェーン 
特   徴 非常に硬く、ばね性を持たせることができる特殊な白金合金である。
板材、線材、留め具、宝飾用チェーンなど、弾性が必要な部品に適している。
一方、一般的なロストワックス鋳造用合金としては扱いにくく、主として加工材として利用される。
主 目 的 硬さ、ばね性、耐摩耗性
ーこぼれ話ー
「白金」と「白い金」は同じもの?

日本語でプラチナは「白金(はっきん)」と呼ばれます。
ところが「白い金」と書くため、金合金カラーゴールドであるホワイトゴールドと混同されることがあります。
しかし、白金とホワイトゴールドはまったく別のものです。
白金は元素記号Ptのプラチナそのものを指します。
一方、ホワイトゴールドは金(Au)を主体として、パラジウム(Pd)などの元素を加えることによって白色系の色調にした金合金です。

例えばPt950は、一般に全体の95%がプラチナであることを表します。
これに対してK18ホワイトゴールドは、全体の75%が金であり、残りの25%にパラジウム、ニッケルなどを組み合わせて白色系に調整した合金です。

つまり、見た目はどちらも銀白色ですが、
白金(Platinum) → Ptを主成分とする材料
ホワイトゴールド(White Gold) → Auを主成分とする金合金

という、元素組成からして異なる材料なのです。

さらに面白いのが、「白金」という言葉の意味が日本語と中国語では異なることです。
日本語で「白金(はっきん)」といえば、一般にプラチナ(Pt)を指します。
ところが中国語では、宝飾分野などで「白金(báijīn/バイジン)」がホワイトゴールドを指す表現として使われています。
一方、元素としてのプラチナを明確に表す場合には「铂(鉑)」や「铂金(鉑金)」という表記が用いられます。
そのため、日本人が考える「白金」と、中国語圏で使われる「白金」では、会話や商品表示の文脈によって別の金属材料を指しています。

さらに両者は、鋳造する側から見ても大きく異なります。
純プラチナの融点は約1,768℃であるのに対し、純金の融点は約1,064℃です。実際の合金では組成によって融解温度は変化しますが、一般にプラチナ合金の鋳造にはホワイトゴールドよりも高い温度が必要となり、鋳造機、るつぼ、鋳型材、埋没材などにも異なる条件が求められます。
但し、ニッケル含有の高いホワイトコールド(ハードホワイトゴールドやパラジウムの含有率が低く融点が1200℃以下のホワイトゴールド)は、金合金や銀合金と同じ埋没材や坩堝を使います。
見た目はよく似た「白い貴金属」でも、材料として考えれば別物なのです。

■  「白金」は白い金ではなく、プラチナという独立した元素。
  「ホワイトゴールド」は、本当に金を白くした合金。

漢字だけを見ると紛らわしい二つの材料ですが、周期表を見れば、PtとAuというまったく別の場所に存在する元素から始まっていることが分かります。
ジュエリーの世界では、色だけでは分からない「材料の違い」があるのです。

 

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