ロストワックス鋳造 の ブロックモールド法 (ソリッドモールド法)では、主に2種類の 埋没材 があります。
一つは、 石膏 が配合された埋没材です。水を混ぜると固まる性質で結合型埋没材と呼びます。もう一つは石膏以外のセラミックが主材の無結合型の埋没材です。水ではなく バインダー で固まる性質で、 無結合型埋没材 と呼びます。
バインダーにはいくつか種類があり、歯科技工で多用されるリン酸塩系埋没材とシリカ100%の シリカ系埋没材 に分かれます。
ロストワックス鋳造での2種類の埋没材
※金属により他の埋没材を使用します。歯科技工では、他の埋没材も併用します。
※ セラミックモールド は、他の鋳型材を使用します。
シリカ系埋没材(俗称:プラチナ用石膏)
シリカ系の埋没材は 石膏系埋没材 とは違い、チタンなど シリカ(SiO2) を極端に嫌う金属以外であれば一般的な殆どの金属に対応します(チタン鋳造専用の埋没材があります)。しかし、価格が 石膏系埋没材 と比べて高価なため、実際には 高融点金属 用として使用されます。
主成分はシリカで、バインダーと混ぜ合わせると900℃以上で固まります。石膏系埋没材とは違い、混水後から凝固が始まることはないので、混錬作業と 脱泡 ( 一次脱泡 、 二次脱泡 を含む)を急ぐ必要はありません。但し、 自硬性 ではないので 焼成 前に強く揺すると「 揺り戻り 」や「型崩れ」が起こります。
シリカ系埋没材の主成分は同じでも、粒の形状・ 粒度分布 により機能や特徴にいくつかの種類が存在します。例えばシリカの粒径を丸くすることで 鋳肌 の表面をより滑らかにできる埋没材などがあります。これは独占的な日本の技術です。
最近では、海外製品でバインダーがすでに混ぜられている高融点用埋没材や、 石膏 のように自硬性で 脱水工程 がいらない埋没材も耳にするようになりました。
但し、手間が省けるメリットはあるものの一長一短があるのは否めません。
バインダー入りの埋没材は、目的に合わせてバインダーの濃度を薄く調整できない欠点があります。また、プラチナ鋳造に自硬性のシリカ系埋没材を使用すると、肌が荒く 鋳巣 も発生しやすくなります。
つまり、品質を優先させるには、従来通りの工程を踏まなければなりません。
注意
融点1300℃以上の金属を鋳造する場合、シリカ系埋没材に少しでも 石膏 が混入すると ガス鋳巣 のとなど、 鋳造欠陥 の原因となります。
石膏系埋没材とシリカ系埋没材の道具は別々に用意するのが望ましいです。
石膏系埋没材の性質はこちらの記事をご覧ください。
【宝飾・アクセサリー】金・銀・真鍮鋳造用の石膏系埋没材とは
遠心鋳造できれいな鋳肌
一般的なシリカ系埋没材は、原料を粉砕しているため粒子に角がある不定形です。不定形は表面積が広く粒子の並びも不規則になるため、 鋳肌の荒れ につながります。
粒子の形状が球状のオール89などの埋没材を使うと、突起がなく表面積も小さいので安定した粒子配列を作れるため滑らかな 鋳肌 をつくることができます。
加圧鋳造で失敗しない鋳型
一般的に 遠心鋳造 では『硬い』鋳型が求められるのに対して、 加圧鋳造 では鋳型に『 通気性 』が求められます。これは、鋳型内のガスの 置換 が遠心鋳造より劣るため、通気性を確保した 鋳型 の隙間から内在ガスを押し出す必要があるからです。
内在ガスをうまく逃がすために、 ワックスツリー の作製方法や 鋳造機 の条件設定を工夫する方法がありますが、残念ながらこれは装置や ワックスツリー のスキルに頼ることになります。
加圧鋳造 で経験が充分にない方、または、非常に複雑で微細な形状を鋳造するには加圧鋳造専用の埋没材オール2000をお勧めします。
但し、 通気性 を確保する分、 鋳肌 は遠心用と比べてやや劣ります。
通気性が調整できる埋没材
加圧鋳造で鋳肌の通気性が求められることは前項でお話しました。
通気性を自分で調整したい方には、通気性調整用のシリカ系埋没材オール1があります。遠心用の埋没材に一定の割合(重量比)で混ぜて調整します。
また、粒子が粗めのため 脱水工程 での 脱水用粉 としても使用できます。
鋳型の脱水時間を短くする
シリカ系埋没材は最低5時間程度、鋳型を放置し脱水する工程があります。気温が寒い時には水の粘性が上がり、脱水時間はより長く必要です。
脱水時間を短縮したい場合は、粒子が細かい埋没材オール3を使用します。
通常使っている埋没材にオール3を10%~20%程度(重量比)混ぜ込んでください。
鋳型を硬くする
このような場合には、通常使っている埋没材にオール3又はピュアコートAを10%~20%(重量比)混ぜ込みます。
オール 3は値段が高いため、硬くすることが目的の場合にはピュアコートAを使用します。
但し、粒径が大きいので入れる量により鋳肌が荒れるので注意が必要です。