【宝飾・アクセサリー】/プラチナ・ステンレス鋳造用のシリカ系埋没材とは

ロストワックス鋳造ブロックモールド法(ソリッドモールド法)では、主に2種類の埋没材があります。

一つは石膏が配合された埋没材です。水を混ぜると固まる性質で結合型埋没材と呼びます。もう一つは石膏以外のセラミックが主材の無結合型の埋没材です。水ではなくバインダーで固まる性質で、無結合型埋没材と呼びます。

バインダーにはいくつか種類があり、歯科技工で多用されるリン酸塩系埋没材とシリカ100%のシリカ系埋没材に分かれます。

 

ロストワックス鋳造での2種類の埋没材

シリカ系埋没材

900℃から950℃の焼成で主に高融点金属の鋳造に使用

対応金属

石膏系埋没材

750℃以下の焼成で、融点1200℃以下の金属の鋳造に使用

※金属により他の埋没材を使用します。歯科技工では、他の埋没材も併用します。
※セラミックモールは、他の鋳型材を使用します。

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シリカ系埋没材(俗称:プラチナ用石膏)

シリカ系の埋没材は石膏系埋没材とは違い、チタンなどシリカ(SiO2)を極端に嫌う金属以外であれば一般的な殆どの金属に対応します(チタン鋳造専用の埋没材があります)。しかし、価格が石膏系埋没材と比べて高価なため、実際には高融点金属用として使用されます。

 

主成分はシリカで、バインダーと混ぜ合わせると900℃以上で固まります。石膏系埋没材とは違い、混水後から凝固が始まることはないので、混錬作業と脱泡一次脱泡二次脱泡を含む)を急ぐ必要はありません。但し、自硬性ではないので焼成前に強く揺すると「揺り戻り」や「型崩れ」が起こります

 

シリカ系埋没材の主成分は同じでも、粒の形状・粒度分布により機能や特徴にいくつかの種類が存在します。例えばシリカの粒径を丸くすることで鋳肌の表面をより滑らかにできる埋没材などがあります。これは独占的な日本の技術です。

 

最近では、海外製品でバインダーがすでに混ぜられている高融点用埋没材や、石膏のように自硬性で脱水工程がいらない埋没材も耳にするようになりました。

但し、手間が省けるメリットはあるものの一長一短があるのは否めません。

 

バインダー入りの埋没材は、目的に合わせてバインダーの濃度を薄く調整できない欠点があります。また、プラチナ鋳造に自硬性のシリカ系埋没材を使用すると、肌が荒く鋳巣も発生しやすくなります。

つまり、品質を優先させるには、従来通りの工程を踏まなければなりません

 

注意

融点1300℃以上の金属を鋳造する場合、シリカ系埋没材に少しでも石膏が混入するとガス鋳巣のとなど、鋳造欠陥の原因となります。
石膏系埋没材とシリカ系埋没材の道具は別々に用意するのが望ましいです。

石膏系埋没材の性質はこちらの記事をご覧ください。
【宝飾・アクセサリー】金・銀・真鍮鋳造用の石膏系埋没材とは

 

遠心鋳造できれいな鋳肌

一般的なシリカ系埋没材は、原料を粉砕しているため粒子に角がある不定形です。不定形は表面積が広く粒子の並びも不規則になるため、鋳肌の荒れにつながります。

 

粒子の形状が球状のオール89などの埋没材を使うと、突起がなく表面積も小さいので安定した粒子配列を作れるため滑らかな鋳肌をつくることができます。

 

加圧鋳造で失敗しない鋳型

一般的に遠心鋳造では『硬い』鋳型が求められるのに対して、加圧鋳造では鋳型に『通気性』が求められます。これは、鋳型内のガスの置換が遠心鋳造より劣るため、通気性を確保した鋳型の隙間から内在ガスを押し出す必要があるからです。

 

内在ガスをうまく逃がすために、ワックスツリーの作製方法や鋳造機の条件設定を工夫する方法がありますが、残念ながらこれは装置やワックスツリーのスキルに頼ることになります。

 

加圧鋳造で経験が充分にない方、または、非常に複雑で微細な形状を鋳造するには加圧鋳造専用の埋没材オール2000をお勧めします。

但し、通気性を確保する分、鋳肌は遠心用と比べてやや劣ります。

 

通気性が調整できる埋没材

加圧鋳造で鋳肌の通気性が求められることは前項でお話しました。

 

通気性を自分で調整したい方には、通気性調整用のシリカ系埋没材オール1があります。遠心用の埋没材に一定の割合(重量比)で混ぜて調整します。

また、粒子が粗めのため脱水工程での脱水用粉としても使用できます。

 

鋳型の脱水時間を短くする

シリカ系埋没材は最低5時間程度、鋳型を放置し脱水する工程があります。気温が寒い時には水の粘性が上がり、脱水時間はより長く必要です。

 

脱水時間を短縮したい場合は、粒子が細かい埋没材オール3を使用します。

通常使っている埋没材にオール3を10%~20%程度(重量比)混ぜ込んでください。

 

注意

粒子が細かいので鋳肌の状態は良くなると同時に鋳型が硬くなります。硬すぎると脱型の際に中の製品を変形させるリスクがあるので入れすぎには注意が必要です。

 

鋳型を硬くする

  • 鋳造する地金の種類や形状の違いで鋳型を硬くしたい
  • 遠心鋳造で混水比を下げても希望する硬さが得られない
  • 遠心鋳造特有の細かいバリを抑えたい

このような場合には、通常使っている埋没材にオール3又はピュアコートAを10%~20%(重量比)混ぜ込みます

オール 3は値段が高いため、硬くすることが目的の場合にはピュアコートAを使用します。

但し、粒径が大きいので入れる量により鋳肌が荒れるので注意が必要です。 

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