ロストワックス鋳造 の ブロックモールド法 (ソリッドモールド法)では、主に2種類の 埋没材 があります。
このコラムでは、結合型埋没材に分類され、一般的に石膏と呼ばれる石膏系埋没材の成分や特性を解説します。
石膏系埋没材の対応金属
750℃以下の焼成で、融点1200℃以下の金属の鋳造に使用できます。
対応金属
- 金 合金(イエローゴールド系・ ホワイトゴールド (Pd 6%以下)
- シルバー合金 ( コインシルバー ・スターリングシルバー・ 白四分一 等)
- 銅 合金( 真鍮 ・ ブロンズ ・ アルミ青銅 ・ 洋白銀 (融点1200℃以下)等)
- アルミニウム (鋳造用アルミ・ ジェラルミン 等)
- 亜鉛 合金( ピューター ・ ホワイトメタル 等)その他融点1250℃以下の金属
※融点が1200℃に近い金属に関しては、その形状等により シリカ系埋没材 が好ましい場合もあります。
※純銅や銅成分が多い 銅合金 ( 丹銅 ・ 赤銅 等)にはシリカ系埋没材の使用を強くお勧めします。
※ セラミックシェル法 では、他の鋳型材が使用されています。
※歯科技工では、リン酸塩系埋没材などの他の埋没材も併用します。
石膏(埋没材)の成分
一般的に『石膏』と称される 石膏系埋没材 の主成分は、 クリストバライト と呼ばれる シリカ です。
これに、 石膏 や他の物質が混ぜられています。
弊社の取り扱いの石膏系埋没材に限りますが、代表的な構成成分は、 クリストバライト が約40%、 石英 が約35%で、残った約25%が3μ~12μ程度の粒子の石膏と微量の水溶性レジンで構成されています。
つまり、『石膏』と呼ばれていても、実は約75%がシリカ系の素材でつくられています。
成 分 | 比 率(重量%) |
クリストバライト | 約40% |
石 英 | 約35% |
石 膏(アルファ―石膏) | 約25% |
水溶性レジン | 微 量 |
石膏の物性
一般的な、いわゆる石膏は硫酸カルシウムの 半水和物 で半水石膏に分類され、焼石膏やバサニ石などと呼ばれています。
天然の石膏としては 二水和物 の結晶で産出されますが、160~170℃で加温すると 半水和物 に変化します。
埋没材 に使われる石膏は、この半水石膏の状態で他の物質と混合されます。
石膏は、700℃で酸化硫黄と酸化カルシウムに分解し始めます。800℃以上で著しい分解が始まり三酸化硫黄を発生するので、これが、ガス鋳巣の原因となります。
鋳造用石膏系埋没材の最高焼成温度が750℃とされている根拠がここにあります。
石膏は、1200℃以上で 無水物 (無水石膏Ⅰ型)に変化して、準安定型の 硬石膏 となります。
また、180℃以下で無水石膏Ⅲ型になり、非常に脆くなります。このため、ロストワックス鋳造の鋳型の場合には、型くずれの原因となります。特に 遠心鋳造 では、鋳型内に 溶湯 が『投げ込まれる』ため、鋳型内部を破壊する可能性があるので、低温での遠心鋳造では特に注意が必要です。
石膏系埋没材の熱膨張
プラスチックや金属と比べ、埋没材の 熱膨張 は極めて少なくなります。
商品により若干異なりますが、800℃で0.7から1.2%の範囲です。
但し、厳密にいうと同じ埋没材でも 混水比 により若干異なります。混水比が例えば38%場合、800℃での熱膨張は、1.1から1.2%なのに対して、800℃で42%の場合約0.8%となります。
埋没材スラリー の水分が多すぎると 鋳型強度 そのものに影響するため現実的ではありませんが、例えば45%の混水比で混合した場合、熱膨張は0.7%となります。
混 水 比 | 熱 膨 張(800℃) |
38% | 1.1~1.2% |
40% | 0.9% |
42% | 0.8% |
45% | 0.7% |
石膏系埋没材の作業時間(凝固がはじまる時間)
石膏系埋没材のワークタイム(埋没を完了しなければならない時間)は、一般的に10分ということになっています。しかし、水温や混水比が変わるとその時間が変わります。
水温が18℃~20℃の場合で比較すると、混水比が少ない方が、凝固が始まる時間が短くなります。
水温が高くなれば、当然凝固開始の時間が早くなります。
余談ですが、水に砂糖を混ぜると遅くなり、塩を混ぜると早くなります。
混 水 比 | 作業時間(凝固開始時間)(水温18~20℃) |
38% | 11~13分 |
40% | 12~14分 |
42% | 13~15分 |
45% | 15~17分 |
埋没材の種類/用途で使い分ける場合も・・・
ロストワックス鋳造(ブロックモールド)で使用する石膏系埋没材は、そのほとんどがシリカ約75%・石膏約25%ですが、その他の微量の混合物などで特性が微妙に変わります。
粒度分布 により鋳肌の状態が変わったり、 生型強度 が変わったりします。
また、埋没材スラリーの粘性が違うものもありますし、 マシナブル 系の素材、例えば、 彫刻用ワックス や3Dプリンター樹脂(キャスタブルレジン)など、 脱ロウ工程 での 膨張 や 焼成 時に燃焼をともなう素材などに対して、一定の強度が保たれている埋没材などもあります。
埋没材の価格は安い方が好まれますが、失敗すれば元もこもないので、ある程度埋没材を使い分けることをお勧めします。
人によっては、二種類の埋没材をご自分で混合している場合もあります。