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吉田キャスト工業株式会社

鋳造用語集

(どう)
Copper

銅は、人類が最も古くから利用してきた金属元素の一つで、イラク北部では、紀元前8800年頃に天然の銅からつくられたと考えられる小さなビーズがみつかっている。

銅は、自然界に自然銅(Native Copper)として単体で存在することがあり、比較的加工しやすいため、鉄器時代よりはるか以前から道具、装飾品、武器などに利用されてきた。やがて人類は銅鉱石から銅を取り出す製錬技術を獲得し、さらに銅にスズを加えた青銅を使用するようになった。この青銅器の普及は、歴史上の「青銅器時代」を形成するほど文明の発展に大きな影響を与えた。

英語名Copperは、ラテン語のcuprumに由来する。これは古代ローマ時代に銅の主要産地であった地中海のキプロス島(Cyprus)と関係し、「キプロスの金属」を意味する表現から変化したものとされる。元素記号Cuも、このcuprumに由来する。

銅は第4周期・第11族に属する遷移金属元素である。電子配置は [Ar] 3d¹⁰4s¹であり、代表的な酸化数は+1と+2である。
純銅は赤みを帯びた特徴的な金属光沢を持つ。多くの金属が銀白色や灰白色を示す中で、銅が赤色を示すことは元素としても特徴的である。

銅の最大の特徴の一つが、非常に高い電気伝導性と熱伝導性である。熱と電気の伝導率が金属の中で2番目に高い(一番は
金属元素の中ではに次ぐ高い電気伝導性を持ち、価格、加工性、資源量などを含めた実用性に優れるため、電線、ケーブル、モーター、発電機、変圧器、電子回路など、現代の電気・電子技術を支える基本材料となっている。
また熱伝導性にも優れるため、熱交換器、冷却部品、ヒートシンク、調理器具などにも利用される。

純銅は軟らかく、展延性に優れ、圧延、伸線、鍛造などによって加工しやすい。一方、純銅の強度はそれほど高くないため、用途に応じてさまざまな元素を添加した銅合金が利用される。
代表的なものには、亜鉛を加えた黄銅(Brass)スズを加えた青銅(Bronze)ニッケルを加えた白銅(Cu-Ni、Cupronickel)ニッケルと亜鉛を加えた洋白(Nickel Silver)などがある。

天然では自然銅のほか、黄銅鉱(CuFeS₂)、輝銅鉱(Cu₂S)、斑銅鉱(Cu₅FeS₄)などの硫化鉱、孔雀石などの酸化・炭酸塩鉱物として存在する。
現在の銅資源では斑岩銅鉱床が特に重要であり、大規模な露天掘りなどによって低品位鉱石から大量の銅が生産されている。
硫化鉱からの一般的な製錬では、選鉱によって銅鉱物を濃縮した後、溶錬、転炉工程、精製などを経て粗銅を作り、最終的に電解精製によって高純度の電気銅を得る。

銅は電線・電子機器だけでなく、建築、配管、熱交換器、自動車、鉄道、産業機械、再生可能エネルギー設備などにも大量に使用されている。
また銅は再溶解しても金属として再利用できるため、リサイクル性の高い金属でもある。電化、自動車の電動化、再生可能エネルギー設備、送配電網の拡大などに伴い、現代社会における重要性はさらに高まっている。

元   素   記   号   Cu
陽      子      数   29
価   電   子   数  11 ※3d・4s電子を含めて考えた場合
原      子      量   63.546
融                点  約1,084.6
沸                点  約2,562
密                度   8.96
存      在      度 地球  約60 ppm(地殻)  宇宙 約0.6 ppm(質量比)
代表的な製品 調理なべ・電線・ケーブル、モーター、変圧器、電子回路、配管、熱交換器、黄銅、青銅、白銅、洋白、銅鋳物

銅と鋳造

銅は人類の鋳造技術と非常に長い歴史を持つ金属である。
純銅だけでなく、黄銅、青銅、アルミニウム青銅、白銅、鉛青銅など、多種多様な銅合金が鋳造材料として利用されている。
しかし、純銅は必ずしも鋳造しやすい金属ではない。
銅の融点は約1,085℃であり、非常に高い熱伝導性を持つ。このため溶湯の熱が鋳型へ急速に奪われやすく、薄肉部や細い流路では凝固が早く進み、湯回り不良(鋳込み不良 / ショート)湯境(ゆざかい)、湯じわなどが発生する場合がある。
さらに銅の鋳造では、 酸素水素の管理が非常に重要となる。

また、ロストワックス鋳造ブロックモールド法では、銅の融点は約1,085℃であり、温度上は通常の石膏系埋没材を使用できる範囲にある。しかし、純銅や銅純度が高い銅合金は熱伝導率が高く、湯回り不良を防ぐために比較的高い鋳造温度鋳型温度が必要となる場合がある。その結果、石膏系埋没材では高温による鋳型との反応が進み、鋳肌に「焼き付き」が発生することがある。

このため吉田キャスト工業では、丹銅赤銅など銅の含有量が高い銅合金や純銅を鋳造する場合には、耐熱性に優れたシリカ系埋没材の使用を強く推奨している。

銅と酸素

溶融銅は酸素を取り込み、酸化銅を形成する。
酸素を含む銅では、凝固後に酸素が主として酸化第一銅(Cu₂O)として存在する場合がある。
酸化物の形成は溶湯品質や鋳造欠陥に影響するため、溶解時には過度な酸化を防止し、必要に応じて脱酸処理を行う。
銅および銅合金の脱酸には、リンなどが利用される。
リンは酸素との親和力が強いため、溶湯中の酸素を除去する目的で添加される。ただし残留リン量が多くなると電気伝導性などに影響するため、用途に応じた管理が必要である。

■  銅と水素-水蒸気反応
銅の溶解・鋳造で特に注意すべき現象が、酸素と水素の組み合わせである。
溶融銅は水素を吸収することがあり、その溶解度は温度や状態によって変化する。酸素を含む銅中に水素が存在すると、高温時に内部のCu₂Oと水素が反応し、Cu₂O + H₂ → 2Cu + H₂Oの反応によって水蒸気が生成する。
発生した水蒸気が材料内部から十分に逃げられない場合、内部圧力によって微細な割れや空隙が形成されることがある。これは一般に水素脆化(Steam Embrittlement)として知られる現象であり、特に酸素を含む銅を水素雰囲気中で高温加熱する場合などに問題となる。
したがって銅では、単に水素量だけを見るのではなく、酸素と水素を組み合わせて管理することが重要である。

■  銅合金と鋳造性
純銅に他の元素を添加すると、強度、硬さ、耐食性だけでなく、鋳造性も大きく変化する。

黄銅(Cu-Zn

黄銅は銅に亜鉛を添加した合金である。
純銅と比較して強度、硬さ、加工性などに優れ、鋳造品、鍛造品、切削加工品として広く利用されている。
鋳造時には亜鉛の蒸発と酸化に注意が必要である。亜鉛の沸点は約907℃であり、銅合金の溶解温度域では蒸発しやすい。そのため過熱や長時間保持によって亜鉛量が減少し、合金組成が変化する場合がある。
また亜鉛蒸気や酸化物の発生は作業環境にも影響するため、適切な集塵・換気設備が必要となる。

青銅(Cu-Sn

青銅は銅にスズを添加した合金であり、人類が古くから使用してきた代表的な鋳造用銅合金である。
スズの添加によって純銅より強度、硬さ、耐摩耗性、耐食性などが向上する。
美術鋳物、仏具、鐘、機械部品、軸受、バルブなど幅広い用途に利用される。
スズ量や他の添加元素によって凝固範囲や組織が変化するため、鋳造条件と合金組成の管理が重要である。

アルミニウム青銅(Cu-Al

アルミニウム青銅は銅にアルミニウムを添加した合金で、高い強度と優れた耐食性、耐海水性を持つ。
船舶用プロペラ、ポンプ、バルブなど、高い強度と耐食性が必要な鋳物に使用される。
一方、アルミニウムは酸素との親和力が非常に強いため、溶解・鋳造時にはAl₂O₃系酸化物の形成に注意が必要である。酸化膜が溶湯内部へ巻き込まれると、酸化物系介在物や欠陥の原因となるため、溶湯表面の乱れを抑えた湯流れ設計や適切な溶解管理が重要となる。

白銅(Cu-Ni

白銅は銅にニッケルを添加した合金であり、ニッケル量の増加とともに銅の赤みが弱くなり、銀白色に近い外観となる。
代表的なものには90Cu-10Niや70Cu-30Niがある。CuとNiは液体・固体ともに広い組成範囲で固溶する代表的な全率固溶型合金系である。【→ 全率固溶体
白銅は特に海水に対する耐食性に優れ、船舶、熱交換器、復水器、海水配管、ポンプ、バルブなどに利用される。
鋳造では酸化、ガス吸収、凝固デンドライト凝固など)時のミクロ偏析などを適切に管理する必要がある。

鉛青銅(Cu-Sn-Pb系など

鉛を含む青銅では、銅にほとんど固溶しない鉛が基地組織中に独立した軟質相として分散する。この鉛相によって被削性、なじみ性、耐焼付き性などの摺動特性(Tribological Properties)を改善できる。そのため軸受、ブッシュ、バルブ、ポンプ部品などに利用されてきた。
一方、鉛相は凝固時に偏析しやすいため、組成、溶湯温度、保持時間、鋳込み条件、冷却速度などの管理が重要となる。
また現在では環境・健康上の理由から、ビスマスシリコンなどを利用した鉛フリー銅合金への置き換えも進められている。

銅と凝固

銅合金の鋳造では、合金元素によって凝固挙動が大きく異なる。純銅に近い材料では比較的狭い温度範囲で凝固する一方、多くの銅合金では液相線固相線の間に凝固温度範囲が存在する。
凝固温度範囲が広い合金では、デンドライト間に液相が長く残りやすく、凝固収縮に対して十分な溶湯補給が行われない場合、多孔質鋳巣引け鋳巣などの欠陥が発生しやすくなる。
また合金元素の分配係数が1から離れている場合には、凝固時に固相と液相の間で元素濃度に差が生じ、デンドライト内部とデンドライト間でミクロ偏析【デンドライト偏析が発生する。
したがって銅合金の鋳造では、「何を添加するか」だけではなく、「その元素が凝固時にどこへ移動するか」まで考えることが重要である。
銅は非常に古くから鋳造されてきた金属であるが、酸素、水素、酸化膜、合金元素の蒸発、凝固収縮、偏析など、多くの現象を制御する必要がある。銅合金の種類によって溶湯の性質と凝固挙動が大きく変化することが、銅鋳造の難しさであり、同時に面白さでもある。

 

ーこぼれ話ー
自由の女神は、もともと緑色ではなかった

ニューヨークの自由の女神といえば、青緑色の姿が印象的です。
しかし、完成した当初からあの色だったわけではありません。
自由の女神の外装には銅板が使用されており、新しかった頃は現在よりも銅らしい赤褐色の外観をしていました。
長い年月にわたって雨、酸素、二酸化炭素などにさらされることで銅表面にさまざまな腐食生成物が形成され、次第に現在の青緑色へ変化していきました。これは、日本の古来からある寺社の屋根などでも見ることができます。

このように銅や銅合金の表面に形成される青緑色の皮膜は、一般緑青(ろくしょう)と呼ばれます。
緑青は単一の化合物だけを意味するものではなく、環境条件によって塩基性炭酸銅や硫酸塩など、複数の銅化合物から構成されます。
興味深いのは、この皮膜が単なる「汚れ」ではないことです。
銅表面を覆う安定した腐食生成物の層は、外部環境から内部の銅をある程度保護し、その後の腐食速度を低下させる働きをします。
そのため銅は、屋根材や外装材など、長期間屋外にさらされる建築材料としても利用されてきました。
つまり自由の女神の青緑色は、
銅が100年以上かけて作り上げた天然の保護皮膜」ともいえるのです。
赤褐色の銅が時間と環境によって青緑色へ変わる――自由の女神は、銅という元素の化学変化を巨大なスケールで見ることができる代表例なのです。

 

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