鋳造用語集

磁気モーメント(じきもーめんと)
Magnetic Moment

磁気モーメントとは、原子や電子が持つ「磁石としての強さと向き」を表す物理量である。
磁石にはN極とS極があるように、電子一つひとつも非常に小さな磁石として振る舞う。この小さな磁石の性質を数値で表したものが磁気モーメントである。
磁気モーメントが大きいほど外部磁場に強く反応し、磁気モーメントが打ち消し合うと磁性は弱くなる。

磁気モーメントは、「高周波誘導加熱」「電磁誘導」「磁性材料」「ネオジム磁石」「モーター部品」「センサー部品」などを理解するうえで重要な基礎知識となる。

誘導加熱においては、鉄・コバルト・ニッケルは強磁性体であるため、比較的低温域ではヒステリシス損も加熱に寄与し、特に鉄や鉄の純度の高い合金の溶解では、装置の過電流トリップにも深く関係する。
一方、銅やアルミニウムは磁性を持たないため、主に渦電流損によって加熱される。

磁気モーメントはどこから生まれるのか

磁気モーメントには主に2種類ある。

■ 電子スピンによる磁気モーメント
最も重要なのが電子のスピンである。
電子は自転しているような性質(実際の回転ではなく量子力学的性質)を持っており、このスピンによって磁石のような性質が生じる
材料の磁性の大部分は、このスピン磁気モーメントによる。

 電子軌道による磁気モーメント
電子は原子核の周囲を運動している。
この電子の運動は電流と同じ働きをするため、小さな電流ループとなって磁気モーメントを生み出す
ただし、多くの金属では結晶場の影響により、この軌道磁気モーメントは小さくなる。

なぜ元素ごとに磁性が違うのか

磁気モーメントは、不対電子」の数によって大きく変わる。
例えば、

元     素 不対電子 磁     性
  (Fe) 多い 強磁性
  コバルト (Co) 多い 強磁性
ニッケル (Ni) 少ないが存在 強磁性
  (Cu) ほぼゼロ 非磁性
   (Au) 0 非磁性
  亜鉛 (Zn) 0 非磁性

不対電子が多いほど磁気モーメントは大きくなる。

単  位

磁気モーメントは通常ボーア磁子(Bohr Magneton記号:μB)で表される。
電子1個の磁気モーメントがおよそ1 μBとなる。
例えば、

元     素 磁気モーメント(μB) 磁     性
 ■  鉄 (Fe) 約2.2 強磁性
 ■  コバルト (Co) 約1.7 強磁性
 ■ ニッケル (Ni) 約0.6 強磁性

これは、結晶中での代表的な値である。

磁気モーメントと磁性の関係

磁気モーメントの向きによって材料の磁性は変化する。

 強 磁 性
磁気モーメントが同じ方向へそろう。
例:鉄、コバルト、ニッケル

 常 磁 性
磁場をかけたときだけそろう。
例:アルミニウム白金酸素

 反 磁 性
磁場とは逆向きの磁気モーメントが生じる。
例:銅、金、ビスマス

レアアースとの関係

ランタノイド元素では4f電子が非常に強い磁気モーメントを持つ。
例:ネオジウムサマリウムガドリニウムテルビウムジスプロシウムは、永久磁石材料として重要である。
特にネオジム磁石は、高い磁気モーメントを持つネオジムとジスプロシウムなどを利用して製造されている。

 

 

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