鋳造用語集

原子半径(げんしはんけい)
Atomic Radius

原子の大きさを表す尺度で、通常は原子核の中心から最も外側の電子までの距離を指す。
ただし、電子の位置は正確に定まらないため、厳密に定義するのは難しく、複数の定義方法が存在する。

  原子半径の差が小さい
原子半径の差が小さい(約15%以内)と、原子が互いに置き換わって置換型溶質元素となり置換型固溶体を形成しやすくなる。
この場合、元の結晶構造を保ったまま、不純物原子が不規則に固溶することで、結晶内の転位の動きが妨げられ、強度や硬さが増す効果(固溶強化)が得られる。
この場合の「小さい」は、複数の元素を比べた時の比較サイズを指す。
元素半径そのものが極端に小さい(母材原子と比較して59%未満)場合には、侵入型固溶元素となり侵入型固溶体になる。
※ 但し、侵入型固溶元素は、晶出の際に偏析する場合もある。

  原子半径の差が大きい
原子半径の差が大きい(15%を超える)と、溶質原子が母材原子の格子ひずみを著しく増大させるため、結晶内部への固溶限が著しく低くなる。
特に、原子半径が極端に小さい侵入型溶質元素(炭素(C)・窒素(N)・酸素(O)など)は、格子間結晶格子に入り込むことでこのひずみを最大化する。
この場合、過剰な不純物原子は、結晶内部に固溶できずに粒界や転位などの欠陥部に強く集まる偏析か、または母材と結合して析出物金属間化合物や酸化物など)を形成する。これにより、粒界の強度や耐食性が低下するなどの悪影響が生じることが多い。

但し、金属同士が「混ざりやすい」か「混ざりにくい」かは、原子半径の大きさだけに留まらず、「結晶構造」「電子配置」の違いなどにより決定される。

主な金属の原子半径

以下の表は、代表的な元素と、それぞれを鉄・銅・金の原子半径を比べた比率(百分率)

金   属   名原子半径 (pm)Fe 基準Cu 基準Au 基準
(Fe)126100.0 %98.4 97.5
ニッケル (Ni)12498.4 96.9 86.1
アルミニウム (Al)143113.5 111.7 99.3
クロム (Cr)128101.6 100 %88.9
チタニウム (Ti)147116.7 114.8 102.1
マグネシウム (Mg)160127.0 125.5 111.1
インジウム (In)167132.5 130.5 116.0
コバルト (Co)12599.2 97.7 86.8
亜 鉛 (Zn)137108.7 107.0 95.1
(Pb)180142.9 140.6 125.0
(Sn)140111.1 109.4 97.2
アンチモニー (Sb)138109.5 107.8 95.8
(Cu)128101.6 100.0 %88.9
(Au)144114.3 112.5 100.0 %
(Ag)165131.0 128.9 114.6
プラチナ (Pt)139110.3 108.6 96.5
パラジウム (Pd)137108.7 107.0 95.1
ルテニウム (Ru)134106.3 104.7 93.1
マンガン(Mn)127100.8 99.2 88.2
ケイ素 (Si)11188.1 86.7 77.1
炭 素 (C)7761.1 60.2 53.5
リ ン (P)11087.3 85.9 76.4
水 素 (H)5342.1 41.4 36.8
酸 素 (O)7357.9 57.0 50.7

原子半径の値は、共有結合半径や金属半径など、定義によって若干異なる場合があります。ここでは、一般的に使用される代表的な値です。

 

 

 

 

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